田川市に進出した企業事例
ごとうじパン工房 マコッペ
「ごとうじパン工房 マコッペ」
今回、開業に至るまでの経緯や補助金の活用に至った経緯、将来のビジョンなどについて、津川正文代表にお話をお伺いしました。
代表の津川様について教えてください。
私は生まれも育ちも田川市で、今は開業したお店の近くに住んでいます。
大学卒業後、市内の幼稚園と市役所で働いたのち、28歳の時に市内の医療・福祉関係の会社で働きました。定年退職後は、自宅で認知症の母を看るため、介護事業所を立ち上げました。
市内で開業された「ごとうじパン工房 マコッペ」について教えてください。
マコッペでは、主に菓子パン、調理パン、フランスパン、食パンを製造販売しています。
当店のパンは、パンの種類ごとに生地を変え、砂糖などの配合割合を調整して作っています。とくに原材料にこだわっていて、安く手に入るマーガリンやショートニングなど、健康に悪いものは一切使わず、必ずバターと国産小麦を使っています。
屋号の「マコッペ」は、私の子どもの名前と、メインで作っている「コッペパン」を掛け合わせて名付けました。
お客様のほとんどは、周辺の銀行や病院に来られる年配の方や近所にお住まいの方です。オープン後から現在まで、ほぼ口コミによりご来店いただいています。また、定年までお付き合いのあった病院や介護施設でもパンを販売しています。売り上げの半分は外販が占めており、経営に欠かせないものになっています。
ここのパンは美味しい!と言ってくれるので、その声が支えになっています。
ここにお店を構えた以上は、地域の催し物には全て参加させていただこうと思っていて、後藤寺商店街のサンQ市にも毎回出店させていただいています。
開業のきっかけは?
2年くらい前に知人から、市内で閉店するパン屋があり、その跡を継いでもらえないかとのお話をいただきました。しかし、今までパン作りの経験は全くなく、大手製パンメーカーから冷凍商品を仕入れて、お店で焼くだけの予定でした。それではお客様に失礼だと思い、当時よく行っていた行橋市のパン屋で1年ほど修行をしました。そしていざそのパン屋で事業をはじめようとしたのですが、パン屋を所有するオーナーから、さまざまな条件提示を受けたため、経営の先行きが見通せなくなりました。諦めかけていたところに、飯塚市でパン屋を閉店する方から、機械を無償で譲るとの話をいただきました。
自宅のある後藤寺エリア周辺にパン屋があまりなかったため、ここでパン屋を開店すればうまくいくだろうと思い、現在の場所で開業しました。
従業員は全員パートで、ハローワークで募集をかけ、パン作りやケーキ作りが大好きという方を選ばせていただきました。現在いるスタッフは全員、ハローワークを通して入っていただきました。そのパートさんは、自宅でパンを焼いてみたり、大都市にある有名なパン屋に足を運んだりしてくれているので、パンに関する知識は非常に高く、大変助かっています。
空き店舗活用補助金はどのようにお知りになられたのかと、補助金があってよかった点について教えてください。
空き店舗活用補助金のうち、「改修費補助金」「雇用補助金」「利子補給金」の申請をさせていただきました。補助金は、市役所職員の知人が存在を教えてくれました。定年退職後に働いた介護事業所で蓄えた資金がありましたので、最低限の補助金しか活用していません。
さまざまな種類の補助金があったおかげで、蓄えた資金を運転資金に回すことができました。物価高騰の今でも、通常に比べてパンの値段を抑えることができているので、大変助かっています。
今抱えている課題は何かありますか。
開業当初の経営は順調だったのですが、国際的な燃料価格の上昇や物価高の影響が出てきていて、毎月のように光熱費やバター・チーズなどの材料費が値上がりしています。また、昨年10月の最低賃金の改定により、パート従業員5名の人件費も増えています。お客様のほとんどがご年配の方のため、値上げが難しく、なかなか利益が上がらない状況です。
また、インターネットを使ってもっと多くの人にお店のことを知ってもらいたいところですが、私を含めたスタッフ全員が機械に疎く、ホームページをはじめ、インスタグラムなどSNSでの周知が十分にできていないのが現状です。
このような状況ではありますが、試行錯誤して、今のところですが事業計画どおりに事業が進んでいます。
今後の展望について教えてください。
当店のことをまだ知らないパン好きな方に向けて、ホームページやInstagramでお店の情報や新商品のパンなどを紹介していきたいと思っています。そのために、SNSの運用に詳しい方にお話を聞いたり、セミナーを受けたりするなどして、操作方法などを学んでいきたいと思っています。
将来的には、出来上がったパンだけを販売するのではなく、お客様にショーケースの中からクリームやあんこなどのトッピングを選んでいただき、その場でコッペパンに塗ったり挟んだりして販売していきたいなと思っています。このトッピングですが、お店の名前の由来である息子がこのお店を継いでくれたときに、始めてくれたらいいなと思っています。
最後に一言お願いします。
空き店舗活用補助金は本当に良い制度だと感じています。田川市内には雇用する企業が少ない上、このような制度を知らず、市外へ出て行かれる方が多いと思います。私が小さいころは、商店街にも活気がありましたが、今ではほぼシャッター街になってしまっています。そのような方たちに、ぜひこの制度を積極的に活用されて、地元で起業していただければと思っています。