田川市に進出した企業事例
株式会社博多久松

田川市に進出した企業事例
「株式会社 博多久松」


(進出協定締結式)

「有限会社久松」は、おせち料理等の食品を中心としたサービスを展開しています。美味しくて安心安全な食品製造・販売サービスを中心に、大手ショッピングモールや自社サイトでのEコマース事業の運営、WEBデザイン、システム開発、マーケティング戦略など幅広く、インターネット通信販売に関する様々な業務に取り組んでおり、田川市のふるさと納税中間事業者(運営会社)でもあります。

このように、様々なサービスを展開していく久松グループとして、なぜ田川市に進出するに至ったのでしょうか。「有限会社久松」と「株式会社博多久松」両社代表の、松田健吾社長にお話をお伺いしました。

(自社のおせちセット)

田川市と関係を持つことになった最初のきっかけは?

20代の頃に、よく田川の友人宅に遊びに行ったり食事をしたりしました。また、友人を含む経営者仲間で集まってビジネス勉強会を開き、共に学んできた思い出があります。これが最初のきっかけです。

事業の関係では、2017年に近隣の自治体でふるさと納税の運営に携わった際に、田川市のふるさと納税のご担当者の方と知り合い、以降ふるさと納税の動向など、いろいろな情報交換をしてまいりました。

ここ最近では、田川市の知人から、農作物をEC(Electronic Commerce※)で販売したいとの相談を受け、ふるさと納税が伸び始めた時期だったので、それを勧めたり、、、

これら様々な経緯から、田川市とは昔からなじみやご縁がある地域だなあ、と感じていたところでした。

※EC(Electronic Commerce※)とは、商品やサービスの配分、受発注から決済にいたるまでのプロセスの一部または全部をインターネットなどの電子ネットワークを介した情報通信によって行なう取引の形態。 電子商取引の意。

あらたな製造拠点を設けようという構想があったのですか?

現在の粕屋工場の生産能力が超えそうになり、あらたな製造拠点の構想を練っていた時にコロナ禍に直面しました。コロナ禍では、当社のような食品製造・販売メーカーはとても苦しむこととなり、その間はふるさと納税の運営代行などで、売上や利益を出してきました。

宴会や結婚式で提供されるものも製造していますが、コロナ禍前までの状況になかなか回復しないこともあり、拠点を設ける話は、出ては取り下げての連続で、自社製造とファブレス(fabrication facility less※)経営の2本軸で生産能力を上げていこうという方針もありました。

(松田 健吾 代表取締役社長)

※ファブレス(fabless)とは、製造や組み立ての工程・設備を自前で持たないこと。fabは「工場」を意味するfabrication facilityの略です。メーカーでありながら、自らは工場などを所有せず、独自に企画・開発した商品の製造を外部企業に委託する経営スタイルを「ファブレス経営」といいます。

田川市に進出した決め手は?

田川市に製造拠点の開設を意識し始めたのは昨年の初頭でした。田川市に進出することの決め手となったいくつかの項目として、

1. ふるさと納税運営代行業務の受託

田川市のふるさと納税は、早い時期からスタートされていて後発ではなかったと思います。しかし、ふるさと納税への機運が徐々に高まる中で、なかなか波に乗れていないことをご担当者の方が悩まれていました。
その後、運営のお手伝いをさせていただくこととなり、寄付額を伸ばしていくための課題を共有し、打開策を協議していく中で、田川市から今回の適地や奨励金制度のご提案をいただきました。

2. 奨励金制度の活用

担当者からご提案いただいた適地は約3,000坪の規模でした。自社が現在所有及び借用している土地が300~400坪の規模ですので、今回の大きな提案に驚いて、1/3程度で大丈夫ですと言ったことを覚えています。
また、奨励金については、『田川市ふるさと納税応分型事業所設置奨励金』を活用いただけることのご説明をいただきました。この奨励金は、「田川工場の新設に係る投下固定資産総額を上限に、最大3年間、田川市に寄付されたふるさと納税のうち、前年度中に返礼品として指定した対象製品の30%が支給される。」というものです。

今後、自社の事業や成長の伸びを考えたときに、この提案は大きなビジネスチャンスだと思いました。今、思い切って投資をした方が、自社と田川市双方の成長に貢献できると思い、ご提案の承諾に踏み切りました。

(田川市ふるさと納税応分型事業所設置奨励金チラシ)

 

3. 市長や市職員の熱い思い

ふるさと納税の業務や運営について、市の担当者の方と十分にお話する場をいただき、関係構築ができたことで、こういう大きな規模感であるにも関わらず、まったく不安なく始めることができました。もし、関係構築ができていない自治体であれば、たとえ有利な補助金のご提案を受けたとしてもお断りしていると思います。それだけ事前の関係構築は極めて重要だと思っています。

このほかにも、20代の頃から田川市の友人やその友人の経営者仲間とよくそこで集まるなど比較的よく行く場所だったことなどがあります。

これらのさまざまな要因が、自社の田川市進出の決め手となりました。自分自身この立地は非常に納得しています。自社の事業が田川市で成功すれば、自社と関わりのある企業様は、改めて自社に強い興味関心を持っていただけるものと思っています。

 

今後田川工場で取り組んでいきたいことは?

田川工場は2024年5月から6月にかけての稼働を目指しており、完成後は、関連会社の株式会社博多久松の本社機能を田川市に移転することにしています。工場スタッフ3名、営業2名、商品開発1名はすでに決まっていて、新工場では自社のおせちセットや他社製品のOEM(Original Equipment Manufacturing※)化を積極的に展開していく予定で、ハイペースで商品開発に取り組みたいと思っています。

OEMは、今期新たに3件が決まっていて、全国からの問い合わせも入ってきています。田川工場の年間最大生産能力は、約30万個ですが、将来的にはそのうち10万個をOEMによる製造で目指しています。
全国のネームバリューのある企業からOEMやコラボ商品を田川工場で製造させていただいて、地場産品として販売できるようなことになれば「熱い!」なと思っています。加えて、当社で販売在庫の変動管理ができれば、OEM先も在庫リスクが減るので、双方リスクがありません。OEMのご依頼が増えれば売上の増加が期待できるので、大きなビジネスチャンスになると思っています。

田川市は、ここ数年ふるさと納税の寄付額が大きく伸びていて全国的にも注目されつつあることは事実だと思います。今回の当社の進出を契機に、全国の自治体や企業からプラスの要因で注目され、田川市の寄付額が全国上位になり、エキサイティングな自治体として名前が挙がるようにしたいと思っています。そのためにも、田川市と情報共有や意見交換をしながら一緒になって面白い取組を進めていきたいなと思っています。

ふるさと納税制度やEC販売はうまく活用すれば、福岡県の地方都市からでも、全国のお客様を獲得して、収益にすることができるという仕組みが、すごく面白いことだと思います。

今月から入ってきた新入社員は、ふるさと納税の事業に大変な興味関心を寄せていますので、この事業に携わってもらうような配置にしています。福岡市内で育った人は筑豊地域が遠いところだと思っているようですが、この事業を通して、関係企業やお客様、地域と緊密に繋がってもらい、さまざまな考え方を持ってもらうことが大変重要だと思っています。

※OEMとは、Original Equipment Manufacturingまたは Original Equipment Manufacturerの略語で、委託者のブランドで製品を生産すること、または生産するメーカーのことです。



(田川工場の完成予想図)

ミニ工場の開設とは?

今後は、ECや百貨店からふるさと納税に販売の流れが加速してくると思いますので、新しくチャレンジする田川工場も製造を加速させたいと思っています。田川工場の建設までに少し時間がございます。それまでの間、別の場所にミニ工場を稼働させるべく準備を進めております。

ミニ工場はなるべく早い時期に稼働したいと思っています。5人程度を雇用し、田川工場と同じかたちで、おせちや一部商品の製造~リリースを考えています。

(自社工場でのおせち製造の様子)

進出協定を機に、地場企業とはどのような繋がりを期待しますか?

田川市から今回の立地条件や奨励金制度のご提案をいただいたときに、自社でさまざまな観点から事業シミュレーションを行いましたが、どう考えてもうまく事が進むに違いない、という結論になりました。そのためには、当社の企業努力はもちろんのこと、地域の企業様からのご協力が必要不可欠であると考えています。

私共は、長らく田川の地で事業を行っていきますので、普段からのコミュニケーションをしっかりとらせていただける企業様や、地域や自治体などと関係構築ができている企業様、スピード感を合わせてくれる企業様とお付き合いさせていただきたいと思っており、慎重かつダイナミックに田川工場での事業を進めていきたいと思っています。

当社としても新たな企業様とのお付き合いやお取引が始まることはすごく楽しみです。新たな企業様やお客様との出会いは、そこから新たなビジネスが生まれるので、事業を広げていくために、地場の企業様との関係構築は大変重要なことだと思っています。

(自社のおせち食材・おせちセット)

 

田川工場での採用予定は?

田川工場は、最大100名程度の社員が働くことが可能なレイアウトで設計を進めています。まずは、2024年5月から6月にかけて、新工場での生産が開始できるように、社員の募集をしていきたいと考えています。

今回の進出協定締結式のニュースが新聞や雑誌で取り上げられ、大変な反響がありました。記事を見た田川市出身の知り合いから激励の言葉をいただいたり、寿退社した田川近郊に住む元社員から、田川工場で働きたいとの問い合わせがあったりしています。郷土愛のある田川地域の方は、このような地元の動向にはすごく敏感だなあと感じました。

私どもは、このプロジェクトに社運をかけており、田川市で末永く操業し、常に成長していきながら田川市の発展に貢献できるように、全力で頑張ってまいります。

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